放射線取扱主任者試験対策室

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放射線の生物に対する作用過程

重要度:★☆☆

放射線は生物に対し,様々な影響を及ぼします.

放射線の生物への作用は,物理的過程,化学的過程,生化学的過程の順に起こります.


放射線の生物への作用過程をまとめると,図1のようになります.

図1. 放射線の生物に対する作用過程

(1)物理的過程

放射線照射後10-18~10-15秒では,物質中に電離(イオン生成)と励起が生じます.X線γ線などの場合は,光電効果,コンプトン散乱,電子対生成に基づく二次電子によってもたらされます.

(2)化学的過程

放射線照射後10-12~1秒では,水分子の電離で生じた一次的な電子やイオンが,他の水分子と反応して,様々なフリーラジカルを生じ,さらにフリーラジカルが拡散してDNA等の生体高分子と反応します.(ラジカルの寿命は約10-10秒)

(3)生化学的過程

放射線照射後数秒~数分では,化学反応が核酸やタンパク質(酵素)などの生体高分子にも及び,それらに損傷を起こします.この損傷を初期障害といい,最も重大なものはDNAの損傷です.

(4)拡大過

初期障害は細胞内の物質代謝によって次第に増幅・拡大され,数分~数時間後には生化学的に検出可能な障害を生じます.

(5)急性影響・晩発影響

生化学的障害が生じた結果,被ばくした組織と損傷の修復状況に応じて,様々な急性障害や晩発障害が出現することがあります.被ばく後数時間から数十日以内に現れる急性影響には,細胞死,組織障害,突然変異などが含まれ,数ヶ月から数十年の潜伏期を経て出現する晩発影響には,発がんや遺伝的影響,白内障などが含まれます.