放射線取扱主任者試験対策室

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気体の検出器

重要度:★★☆

気体の検出器には,電離箱,比例計数管,GM計数管があります.

これらは,検出器に印加する電圧の違いにより,出力されるパルスの大きさが異なりますが,検出に気体の電離を利用する点で共通しているため,動作原理はまとめて覚えましょう.

印加電圧の上昇とともに,どのような順番で領域が現れるか,また,それぞれの領域における出力パルス波高が,放射線のエネルギーに比例するかどうかについて,原理と合わせて覚えてください.


ガス入り検出器の動作原理

ガス入り検出器の電極に印加する電圧と吸収されるイオン数(パルスの高さ)の関係を図1に示します.

図1. ガス入り検出器の印加電圧と吸収されるイオン数の関係

(1)再結合領域

印加電圧が低い場合,イオンが電極まで移動するのに時間がかかるため,気体の電離で生じた電子-イオン対が再結合してしまいます.この領域では,電極に移動する間に再結合によって失われる電子-イオン対があるため,出力パルスは電離された量よりも小さくなり,検出器としては使えません.

(2)電離箱領域

印加電圧を徐々に上げていくと,電極に引き寄せられるイオンのスピードが速くなるため,再結合が起きにくくなり,電離された量に応じた出力が得られるようになります.この領域では,最初に生じた電子-イオン対がもれなく回収されるため,出力パルスの大きさは電圧に対して一定となります.

(3)比例計数管領域(比例領域)

電離箱領域から印加電圧をさらに上げていくと,最初の電離で生じた電子が芯線に到達するまでに電場によって加速され,それ自身が次の電離を引き起こす(=電子なだれ)ようになるため,出力パルスが上昇し始めます.この領域では,印加電圧を固定しておけば,その電圧における増幅率は一定となるため,出力パルスの大きさは最初の電離で生じた電子-イオン対の数に比例します.

(4)限定比例領域(制限比例領域)

比例計数管領域から印加電圧をさらに上げていくと,ガス増幅で得られる陽イオンが多くなり,電界分布に大きな影響を与え始めます.この領域では,放射線のエネルギーと出力パルス波高は比例しなくなります.

(5)GM計数管領域(GM領域)

限定比例領域から印加電圧をさらに上げていくと,ガス増幅がさらに大きくなり,電子なだれが繰り返された結果,出力パルスが最初に生じた電子-イオン対の数に比例しなくなります.この領域では,放射線のエネルギーに関係なく,一定の大きさの出力が得られることになります.

(6)連続放電領域(放電領域)

GM計数管領域から印加電圧をさらに上げていくと,荷電粒子の入射量とは関係なくコロナ放電を起こし,放電状態が連続して起こるようになります.この領域は,測定には使用できません.


【気体の検出器に関する過去問題】

2018年度物理問27

2019年度物理問28