放射線取扱主任者試験対策室

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運動量とエネルギー

重要度:★★★

物理学の試験において,計算問題が出題されます.

ここでは,粒子(古典力学の場合,相対論的力学の場合の両方)と光子の運動量及びエネルギーを表す式((1)~(8)式),また,光子や量子力学における粒子の,粒子性と波動性を結びつけるド・ブロイ波長を表す式((9)式)について暗記してください.

(1),(2)式は,高校物理の範囲です.

(3)式は,物理学者アルバート・アインシュタインの有名な公式として,知っている方も多いと思います.

(4),(5)式あたりが少し複雑で覚えにくいかもしれませんが,基本(静止状態~通常の速度)は(1),(3)式で,速度が光速に近づくと,質量の部分が(6)式で置き換えられる,といった感じで覚えるとよいと思います.

(7),(8)式については,\displaystyle {E = h\nu}だけ覚えておけば,\displaystyle {p = mc}\displaystyle {E = mc^{2}}の関係から(7)式を導くことができ,速さ・時間・距離の公式(距離=速さ×時間)すなわち,\displaystyle { \lambda = cT = \frac{c}{\nu}} Tは周期で振動数 \nuの逆数)から,\displaystyle { \nu = \frac{c}{\lambda}}となるので,(8)式を導くことができます.

(9)式のド・ブロイ波 \lambdaは,式が簡単なので暗記してしまった方が早いですが,(7)式中辺の Eに,(8)式右辺を代入して変形することによっても求められます.


粒子の運動量とエネルギー

古典力学では,粒子の質量を m,速度を vとすると,運動量 pと運動エネルギー Tは,

 \displaystyle \begin{eqnarray} \require{color} \textcolor{red}{p = mv} \end{eqnarray}
(1)
 \displaystyle \require{color} \textcolor{red}{T = \frac{1}{2} mv^{2}}
(2)

で与えられます.

 

一方,速度 vが光速 cに近づくと,相対論的取扱いが必要となります.

アインシュタイン特殊相対性理論では,静止質量 m_{0}の粒子は,存在するだけで,

 \displaystyle E_{0} = m_{0}c^{2}
(3)

で表される静止エネルギー E_{0}を持ち,相対論のエネルギー保存則は,運動エネルギー Tにこの静止エネルギー E_{0}を加えた全エネルギー Eに対して適用されます.

以上より,相対論的力学では,運動量 pと全エネルギー Eは,

 \displaystyle \require{color} \textcolor{red}{p = \frac{m_{0}v}{\sqrt{1-\left( \dfrac{v}{c}\right) ^{2}}}}
(4)
 \displaystyle \require{color} \textcolor{red}{E = T+m_{0}c^{2}} = \sqrt{p^{2}c^{2}+{m_{0}}^{2}c^{4}} \textcolor{red}{= \dfrac{m_{0}c^{2}}{\sqrt{1-\left( \dfrac{v}{c}\right) ^{2}}}}
(5)

で与えられます.

(1),(4)式より,粒子の質量 mは,

 \displaystyle \require{color} \textcolor{red}{m = \frac{m_{0}}{\sqrt{1-\left( \dfrac{v}{c}\right) ^{2}}}}
(6)

と表すことができ,「速度 vが大きくなり光速 cに近づくと,分母が小さくなるため質量 m m_{0}よりも大きくなる」と見ることができます.

光子の運動量とエネルギー

光子(X線γ線などを含む電磁波)は,波の性質と粒子の性質の両方を持っています.

光子の振動数を \nu,波長を \lambdaとすると,運動量 pとエネルギー Eは,

 \displaystyle \begin{eqnarray} \require{color} \textcolor{red}{p = \frac{E}{c} = \frac{h\nu}{c}} \end{eqnarray}
(7)
 \displaystyle \require{color} \textcolor{red}{E = h\nu = h\frac{c}{\lambda}}
(8)

で与えられます.

粒子のド・ブロイ波

量子力学では,電子や陽子などの粒子は,粒子の性質とともに波の性質を持っています.

粒子の運動量を pとすると,波長 \lambdaとの間に,

 \displaystyle \require{color} \textcolor{red}{\lambda = \frac{h}{p}}
(9)

が成り立ちます.このときの \lambdaド・ブロイ波長といいます.